2012年5月13日日曜日

その子の世界を受けとめる余裕

日本赤ちゃん学会理事長、同志社大学赤ちゃん学研究センター教授の小西行郎先生のお話を聞くことができました。以前から著書も読んでいて、是非とも直接お話を聞きたかった方なのでとても良い時間を過ごすことができました。
前半は赤ちゃんの力についてのお話でした。心はいつできるのか、それは胎児の時期にはないのではないかというお話でした。僕も漠然と心とは意識だと感じていたので、その話はすっと自分の中に入ってきました。
その中でも「赤ちゃんというのは自ら動いて、触って、見て、聞いて、行動を変える。その輪の中で認知性や社会性を獲得する。赤ちゃんは自ら育つ力を持っているので、なにかおしえなきゃいけないとかと言って、その学習の邪魔をしないでほしい。てめぇでやってんだから、手だすな」というお話がありました。
本当にそうなんですよね。大人がこの学習の芽をたくさん摘んでしまっていることはよくあるんだと思います。「それは触ってはだめ」とか「そっちに行っちゃだめ」と言って、子どもが学習するのを止めている。そして、「これを勉強しなさい」、「こうした方がいい」ということが教育だと思ってどんどん教え込んでいくんですよね。他にも前半では心の芽生えの時期や胎児期の親はもっと楽にしていればいいというお話がありました。まだまだ咀嚼できませんが納得するお話でした。

後半は発達障害についてのお話でした。
「発達障害の子どもたちは同じ世界に住んでいると思っているから今の間違った指導があるんです。ところが住む世界が違うと思ったら今の指導は成り立たない。そこから入っていなかいとダメなんです。そして、その世界を受けとめてあげるしかない。本人はものすごいしんどいです」といったお話や
「多様性というわりには今の世の中は多様性を許さない。おっちょこちょいとかあまのじゃくとか慌てん坊という言葉がなくなった。発達障害という言葉が入ってきてレッテルをはりだした。こだわりも悪い言葉になっているが、日本の伝統芸能はこどわりだらけ。ずっと漆を塗ったりなんてこだわりがないとできない。以前はこだわりはいいことだと言われていたのに、今では悪いと言われる。保育士や教師や母親は子どもの気になることばかり探し出す。明らかに発達障害は増えすぎる、こんなにいるはずがない。もっと子どものいいところを見ていこうよ」がありました。
発達障害の子の関わり方もありますが、これはすべての子どもに関わることなんだと思います。どんな子にも個々にこだわりや興味、関心は違います。それをそれでいいんだと認めていくのが大人の関わり方のはずなのに、少しでも周りと違うと排除しようとする。発達障害の子をつくっているのはその子に関わる大人なんですよね。これを理解しないとどんどんそういう子が増えていきます。障害があろうがなかろうが、その子の考えていること、その子の世界を理解しようとしない大人の関わりは危険だし、罪深いのではないでしょうか。
今回のお話を聞いて、今自分たちが考えていることは間違いではないんだと思えることができました。しかし、もっと考えを深めないといけないことはありますし、その考えをどう直接の子どもとの関わりとしていくのかも考えて、実際によりよい方法を試していかなければなりません。


最後に先生に質問をしたのですが、自分もこだわりが強いというようなことも交えて質問させてもらいました。その返答の中で「あなたも僕も全然変わってないから。僕もこだわりは強いので、いいんちゃいますか。だからずっとこだわってください。それは問題じゃないよ」という言葉をかけていただきました。小西先生の懐に広さ、余裕を感じました。

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